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【レポート・前編】仲先生・岡村社長の考えるNo.1「”はたらく”の未来って?」

2020.06.10 開催

6月10日(水)に、オンラインイベント「仲先生・岡村社長の考える ”はたらく”の未来って?」を緊急開催&配信しました。

新型コロナウイルス感染症の影響で「働き方」は大きく変わり始めています。
そこで、ワークプレイス研究の第一人者でもあり昨年京都流議定書にもご登壇いただいた、
京都工芸繊維大学 仲 隆介教授をお招きし「はたらく」の未来について、ウエダ本社代表 岡村社長とお話し頂きました。

メインの対談はもちろん、皆さんからの質問にお答えしたセッションパート、さらにはアフタートーク(なんと30分!)までたっぷり大充実となった今イベント。
”たっぷり大充実”の中身をもっと知りたい!という方は、Youtube にアーカイブを残してありますので、ぜひそちらも併せてご覧ください!

今回はレポート前編として、「第一部 ”はたらく”の未来って?」の様子をお伝えします。
岡村社長から仲先生に疑問・質問を投げかけていきながら、”はたらく”の未来について話をして頂きました。

仲先生(以下、仲)、岡村社長(以下、岡村)

beforeコロナの社会、オフィスはどんな様子だった?

仲: まず、日本の経済状況が芳しくないですよね。
時価総額TOP企業をみると、平成元年頃は20位までの多くが日本企業であったのに、現在はほとんど入っていない・入っても1社。世界中の企業がクリエイティブ・イノベーションの必要性を謳い、そのための働き方へ変わっていった時に、日本はトップの状況を維持するための戦略をとった。
それが仇となり、他の国が成長する一方で日本のGDPは変わらず置いていかれました。

 

 

オフィスに焦点をあてると、かつてはオフィス=コストと考えられていました。
それが、お金・知識がちゃんと生まれるオフィスが必要だと言われるようになった。オフィス=投資となり、執務室であったところが多様な共創空間が増えています。この流れを、新型コロナウイルスの流行は後押ししていると感じます。オフィス内の多様性にとどまらず家で働く・オフィス外で働くも含め選択肢が増えたんですね。
こういった選択肢は今までも存在していましたが、機能していませんでした。

いつから日本においてもオフィス=投資の傾向強まってきたのか

 

仲: オフィスの研究は37~38年前からしていました。当時はだれも興味を持ってくれませんでした。
2000年位から「アウトプットがちゃんと出るようなオフィスにしたい」と企業から声がかかるようになりました。
メーカーは家具の話のプロだけどオフィス内活動の話は研究者にと声が掛かって、みんないっしょになって考え出したんですね。象徴的なのはS社の話です。
本社オフィスを作る計画があり、最初は総務の主導で”いわゆる”オフィスが提案されたのですが、当時の社長が「会社の考え方が反映されていない!」と仰ったんです。
「我々の働き方ってなんだ?オフィスってなんだ?」と。トップのメッセージを受け、多分野に渡る識者も集められ社内外の人間がとことん議論をしました。その内に
「オフィスも空間(誂え)だけでなく、使われる道具や営まれている働き方…Space,Style,Toolまでデザインして作らないと成果は生まれない」
と、方向性が見えてきたんです。この議論はとても画期的でした。
その頃からオフィスの意味を考える企業が少しずつ増え、範囲が広まっていった感覚があります。

(余談ですが…)
ちょうどこの話の最中に音声トラブルが起こりました。(S社の話をしたのがよくなかった?!)
オンライン上でご参加いただいた皆さんからの温かい声かけも有りスムーズに復旧できました。ありがとうございます!

経営者目線で「成果の出るオフィス作ろう」と意識変わったのはいつ?

岡村: 京都という土地柄も関係するかもしれませんが、私の感覚でいうとここ2~3年のことで「ようやく」という気持ちです。そしてコロナが後押しとなっています。
いま我々が広めようとしていることを2000年からやっておられてすごいなと感じますし、先程の事例で言えば社長が素晴らしいと感じます。
そういう例が生まれると他の経営者も気付き始めますね。我々自身は10数年前からずっとやっていたけど中々理解されず、最近話が通じるようになってきていました。
そして、このタイミングでコロナが来て、一気にやらざるを得なくなった。いよいよシフトチェンジの時期で、価値観がガラッと変わっていくと感じています。

 

一方で株価は良い、元に戻ってしまう危機感

 

仲: 二極化するでしょう。全く学ばなかった人たちと、多く学んで変えようとしている人たち
緊急事態宣言が解除され出社を命ぜられたところもありますね。方向性が見えない中で決定権がある人の価値観に左右されるのは非常にリスキーです。
災難が過ぎたら元に戻すのも一つですが、本当はそれはもったいないんですけどね。



 

岡村: だからこそ中小企業は思い切ってやれると思います。
大企業や歴史ある企業は、中々変えられず元に戻ってしまいがちです。中小企業の方が思い切れるチャンスがあります。

 

仲: しかし、中小企業の現実に目を向けるとテレワーク一つ取っても1人1台ノートPC持てない会社は山のようにあり、一朝一夕での話ではない。地方自治体でも同様ですね。
こういうところは”しょうがなく”元に戻ってしまう傾向にあります。そこでウエダ本社のようなところが、”しょうがなく”元に戻っている企業をサポートできたらいいですよね。おせっかいすべきなんですよ。

 

岡村: おっしゃる通りです。
できるところはそれでいい、一方そうでないところも少しでも・徐々にでもやっていく必要がある。我々はその部分の伴走をしたいと考えています。

 

巨大IT企業から読み取れる、テレワークによって見えづらくなるもの

岡村: 巨大IT企業でもオフィスに対して考え方が分かれていますね。
Twitterは原則在宅、Appleは出社へ戻す、Facebookは在宅勤務安定には5~10年はかかると言っています。これは意外でした。

 

仲: みんな迷っていますよね。それぞれの直感を頼りに「まずはやってみよう」としているように感じます。
日本は高度経済成長時代に、経済効率最優先・それ以外を置き去りにしていしまいその結果日本のまちがどこも同じ様相になりました。
価値の見えにくい個性や味のあるものが見過ごされた。今回のコロナに関しても、価値の見えにくいものがまた置き去りにされないか危惧しています。感情・ノリ・気持ち…そういったものです。
偶発性もそうですね。大学の製図室では、学生さんたちは誰かが手取り足取り教えるわけでなく周りを見て学び、みんなで壁を乗り越えていきます。オフィスも同じです。
それら見えにくい価値を認識した上で、テレワーク等を上手に選択するのがいいと思います。

 

岡村: おっしゃる通りです。
できるところはそれでいい、一方そうでないところも少しでも・徐々にでもやっていく必要がある。我々はその部分の伴走をしたいと考えています。

 

在宅やサテライト等多様な働き方の中で、大切なことはなんだろう

仲: 「弱い紐帯」という言葉があります。
偶然会った時に「最近どうよ?」と話す程度の関係のことです。意図を持っていないけどとても大事な行為で、これらも含めて我々は働いています。
効率面だけを考えれば必要タスクをこなすだけでいいですが、イノベーションは生まれません。
Appleのスティーブ・ジョブズも「アイデアを生むためには計画外の共同作業が一番大事」と言っていましたね。

 

岡村: これからの働き方ではジョブ型が増えますが、いわばスキル勝負です。
そこで勝負できない企業・個人はそういった偶発性も含めて価値を出さないといけない気がします。

 

ジョブ型社会で勝負するのが難しい企業・個人は、どうしたらいいのか?

仲: 日本文化にはジョブ型ってまだ合わないんじゃないでしょうか。僕がアメリカへ行った際、子どもが幼稚園で「自分が好きなものを、どうしてそれが好きなのかをアピールしなさい」という宿題をもらいました。
その年頃から自分の価値をひとに理解させる教育が施されているんですね。日本では協調性を重んじる教育をしています。もう一つ、MITの学生に「日本のコラボレーションはみんながハッピーでいいな」と言われた話も印象的です。
彼に言わせると、アメリカではベストをまず選び他の人はその手伝いをするそうです。5色あったとしてブルーが選ばれたら、一番きれいなブルーを目指します。
でも日本では虹色を目指す。失敗するとグレーになりかねませんが(笑)、とてもハッピーだと彼は言いました。そういうチームワークをできるのが日本です。チームにできない人がいても一緒に連れて行き、同じ場にいることでいつの間にかできている。
だからジョブ型にしても、チームとしての成果をとる必要があると思います。

 

オフィスと働き方・文化は連動しているがどうなっていく?

岡村: オフィスは働き方・文化と別物に捉えられている感じもありますが、実は連動していますよね。
ヨーロッパでは個室タイプ、アメリカではローパーテーションで区切り、日本では島型で管理型、という具合に。
先生のおっしゃる教育や民族性も絡んで考えると、今後オフィスの形と働き方はどうなるのでしょうか?

 

仲: まずは自分たちの状態をちゃんと知るのが大前提です。
そして色々やってみればいいと思います。変化を阻まずに、まずやってみる。大きな方向性を決めるほどの経験をまだしていないので安易にfixさせてしまうことはむしろ危険です。
経験していく中で、咀嚼し自分のものにした上で、どうするのか決めれば良いんです。ただ、日本は決定速度が遅い傾向があります。バランスが必要ですね。

 

岡村: PDCAではなくOODA、ですね。やってみて、観察し、決定し、またやってみる。

ソーシャルディスタンス確保すると、大きなスペースが必要になるのか?

仲: だからこそオフィスとテレワークを含めた多様な選択肢が必要ですよね。
チームと個が最良の選択ができるように、各々の状況に合わせて働く場や働き方を、自律的に判断できるようになる必要があります。
既にオフィスをなくす企業もあるようですが、オフィスを使わなくても選択肢として持っておくべきに感じます。

 

岡村: いずれにせよ、あらゆる企業がこのコロナで従来とは違う働き方を経験したことは大きいですよね。
日立のように、昔の考え方が強い企業でも何かしなくてはいけないと考えていることを感じます。

 

オンラインも含めた多様な働き方で、偶発性をどう保つ

仲: 大学の研究室では最初zoomルームを開けっ放しにし、学生さんたちがいつ来てもいいようにしました。しかし、誰も来なかった。次にSpatialChatというのを作りました。
これもオンラインツールですが近付いたり離れたり距離感を作れるので「なんとなくいる」など居方を選ぶことができます。すると、学生さんが少し来始めた。そこに、ある学生さんが研究室の平面図(部屋を上から見下ろした図面)を入れてくれたんです。
そうすると僕は自室に、学生さんたちは研究室にアイコンを置いて、用があれば互いに寄る…ということがオンライン上で可能になりました。在宅勤務していた人たちがオフィスに戻ってきていますが、戻れない人もいますし、子どもがいる人など自宅で仕事をしたい人たちもいます。
でもコミュニケーションはちゃんと取っていく必要がある。
SpatialChatのようなツールはこれからどんどん生まれてきます、そういうもの使ってどうリアルとバーチャルを上手く組み合わせていくかが問われてきますね。

あえて、ノイズをつくる。人間には素晴らしいセンサーがある。

岡村: あえてノイズを作ること、の必要性ですよね。
ウエダ本社で2交代制(全社員を2グループに分け、交互に出社・在宅勤務をした)を行ったとき、
ある社員から「日中でも使っていい、雑談スレッドを社内グループウェアに作りたい」と相談がありました。
LINE WORKS等のコミュニケーションは従来より増えたのですが、感覚的にコミュニケーションが取れていなかったんですね。
効率一辺倒ではなく、”あえて”ノイズを作っていくことって必要ですね。ちなみに雑談ルームはもちろんokしましたし、2交代制は終わったいまでも使われていますよ。

 

仲: 人間って素晴らしいセンサーを持っています。
ビミョウな変化…目が動いただけでも気が付きます。さすがにバーチャルはここまで追いついていませんし、そう簡単に追いつけないと思いますが、求められている部分です。
もしザッカーバーグがこの点で「5年掛かる」と言ったならば、むしろすごい(笑)ノイズみたいなものも、人間に素晴らしいセンサーがあるから成立していますよね。空気を読む、なんてのもそれに近い気がします。

〈 第一部 おわり 〉

Writer_ あさい
Photography / Illustration_ デザイン室
・・・


〈レポート・後編〉仲先生・岡村社長の考える”はたらく”の未来って? 

次回「◯◯さん・岡村社長の考える」シリーズは7月9日(木)!

早速ですが次回イベントのご案内です!
次回は7月9日(木)の16時から、同様にオンラインでの開催を予定しています。

様々な企業の支援・伴走をされウエダとも『TRAFFFIC』を一緒に運営頂いているRELEASE;の桜井さんをゲストにお迎えし、
より具体的な「何からはじめたらいいんだろう?」という問いに迫っていく予定です。

くわしくはこちら!

イベント内容

 

新型コロナウイルス感染症の影響で「働き方」は、大きく変わり始めています。「これからの働き方にあわせたオフィスってどんなの?」
「ほんとうにオフィスって必要?」
「感染予防しながらコミュニケーションのとれる働き方って?」ワークプレイス研究の第一人者でもあり、昨年 京都流議定書にもご登壇いただいた
京都工芸繊維大学 仲 隆介教授をお招きして「はたらく」の未来を、一緒に考えていきたいと思います。

 

イベント詳細

日時 6月10日(水)16:00~18:00(15分前から参加可能です)
会場 zoom
※お申込みいただいたメールアドレスに参加用のURLをお送りいたします。
タイムスケジュール 16:00~16:10 あいさつ・趣旨説明
16:10~17:10 ”はたらく”の未来って?
17:10~17:15 休憩
17:15~17:45 セッション
※チャットでなげかけていただいた質問を基に、「はたらく」の未来をさらに深く考えていきます。
17:45~18:00 クロージング
18:00~18:30 アフタートーク ※自由参加
※質問タイムでお答えしきれなかったことや、まだまだ話したいことをゆるっとお話する時間です。
18:30     終了
登壇者 仲 隆介 氏(京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系教授)
岡村 充泰 氏(株式会社ウエダ本社代表取締役社長)
参加費 無料

 

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